令和4年、移動体通信は第5世代の普及を待ちわびている今日この頃ですが、折り畳み式ケータイはどのように進化していくのでしょうか。
ドコモオンラインショップで購入できるガラケー、ドコモ的には「ケータイ」と称される機種ですが、FOMAではなく4Gのケータイが登場したり、カメラレスモデルが登場したりと面白い流れが続いているので、私が所有した2機種をレビュー(という名の書きなぐりを)しようと思います。

所有機は二度に渡る水没の結果、サブディスプレイが発光しなくなった。

アクオスケータイ SH-02L
2019年2月に発売された4Gケータイです。先代のSH-01Jのマイナーチェンジモデルとして、引き続きカメラ、ワンセグ、NFC搭載、防水有りと、かつての「ガラケー」を思わせる装備を引っ提げて登場しました。
SH-01Jと比較すると内部ソフトのマイナーチェンジ、細かな操作性の変更が目立ちます。ヒンジのボタンを押すと開く機能やタッチクルーザー(ダイヤルパッドをスライドパッドのようになぞり、画面のカーソルを操作する機能)は廃止、SDカードのSDXC規格は非対応になりました。その代わり、内部のOSバージョンは8.1.0に引き上げられていて近代化しています。
4GケータイはOSがAndroidベースになったため、パソコンに接続してシェルコマンドを実行したり、野良アプリのインストールができるのはSH-01Jと同様です。趣味でこの機種を使う場合、野良アプリのカスタムなしではやや使いにくい部分が多いです。
アクの強さとDIY的な対処
もともとスレート状のスマートデバイスで実行するAndroid OSをガラケー用にカスタムして搭載しているので、独特のアクの強さがあります。また、サードパーティアプリの実行は意図されておらず、リソースが非常に限られています。
アクの強さについて
何かの機能を使っているときに通知が来ると、画面上側に割り込んで表示されるのはAndroid譲りです。しかし、割り込み表示のない通知や割り込み後に通知を選択したい場合、今使っている機能をすべて閉じて待ち受け画面まで戻らないと通知に触れることができません。Bluetoothマウスを使えばブラウザを開きながら通知バーをクリックすることができますが、実用的な対処法ではありません。
画面の明るさは、自動調整されません。直射日光の下では見づらくなるので、明るさを最高にしておくと、屋内に入ったときに画面がまぶしくなります。屋外→地下鉄の行き来を繰り返すような使い方では目に来ると思います。
画面の明るさを調整するには、「メニュー→設定→壁紙・ディスプレイ→明るさのレベル→調整して決定」という煩雑な手順が毎回必要になります。しかし、オフィシャルな対処法もなくは無いです。クイック起動キーに「長エネスイッチ」を割り当てて、その機能で「画面の明るさを最小にする」をオンにしておけば、最低輝度と任意の輝度の往復であればワンキーで切り替えができるようになります。
NFCは、2022年に実用するには縛りが厳しくなっているようです。私はおサイフケータイ機能を使わないので詳しい使い勝手は評価できないのですが、JR東日本のモバイルSuicaには対応しなくなっています。ただ、NFC対応のBluetooth機器とのペアリング等はできるようになっています。
LINEは非対応です。漢は黙ってVoLTE通話。(黙って通話できるんかい)
数日起動しておくと、なぜか電池の減りが早くなってきます。これは再起動で一時的によくなります。
バイブレーションはあまり強くありません。

起動してしばらくするとディープスリープに入らなくなる。私は不眠症ケータイと呼んでいた。

ガラケーはポケットに入れやすいので、歩数計としても使えるよ。

DIY要素
操作性の不満は野良アプリで解決したくなります。その時に気を付けておきたいのは、そもそも使えるリソースが少ないということ。搭載しているSoCのSnapdragon 210が遅いということと、物理メモリが1GBしかないことは何があっても忘れてはいけない最重要項目です。メモリを喰う常駐アプリを入れるなら、最大限仕事してもらえるアプリを入れないと割に合いません。
また、「Google Play 開発者サービス」に依存する機能は使えません。アプリ内課金は依存機能の最たるもので、すべての野良アプリは未課金状態で使うことになります。「COCOA」もインストールはできますが、接触確認処理が走るとアプリが落ちます。
私が入れた野良アプリ
MacroDroid
上記の操作性の不満をほぼ払しょくできる神アプリです。SH-02Lは、クイック起動キーというランチャーキーが3つ、ダイヤルパッドの下に用意されているのですが、そのキーはAndroidで言うところの「ウィジェット」も割り当てることができます。ウィジェットで動作するマクロをMacroDroidで組んで、クイック起動キーから作動させるという使い方をします。
これで解決できるのは、以下の不満点です。
・画面の明るさ調整の煩雑さ
・通知さわれない
・電池がなぜか減る(から再起動したい、できれば自動で)
それぞれのマクロはこんな感じに組んでおくと便利です。
その他細かいこと
Androidアプリを入れる場合、ABIは、「armeabi-v7a」対応のものか、ユニバーサル版をインストールしてください。それ以外を入れようとするとadbが固まったり、エラーが出ます。
タッチクルーザーが廃止されたので、フォーカスが当たらない部分を操作したい場合、Bluetoothマウスが必要になります。USBホスト機能はないため、USB接続のマウスは使えません。
連絡先とスケジュールを同期したい場合、Outlookが使えます。非常に操作しにくく遅い上にメモリをパクパク食べます。他に常駐ソフトを入れられないくらい大食漢です。
位置情報はGPSとGLONASSが受かります。SIMを抜いていると測位が遅くなります。GPS Statusで確認する場合、バージョン番号V9.0.181とProxy Plugin V9.0を入れると通知にも測位状況が表示されます。
システムUI調整ツールは開いたとたんに落ちます。使えません。
通知をほかのスマートフォンやタブレットに送信して閲覧できる「PASSNOW」は、新しめのAndroidを子機にすることはできません。
充電でバッテリーの温度が上がりやすいです。40℃までは簡単に上がっていきます。
長エネスイッチのCPU速度制限をオンにして、メモリをたくさん使う野良アプリを常駐させておくと、スペック不足で音声着信に応答できなくなります。かなりイライラします。
MicroSDのサポートはSDHC 32GBまでとなっていますが、単にexFATに対応しなくなっただけです。FAT32でフォーマットしたMicroSDカードを使えば64GB以上も読み書きできます。
メニューの「カメラ/TV/音楽」から音楽を聴けます。音楽はアルバム別に整頓されており、順番に再生する以外に、シャッフルもできます。オリジナルのプレイリストを作ったり、PCからM3Uプレイリストを読み込んで再生することもできます。Bluetoothヘッドセット等とつないでワイヤレスプレイもOKです。さすがガラケーの末裔。でも、ディスク番号を認識してくれたかなあ?
通信ポートはMicroUSBです。発売時期ゆえ仕方ない。
NFCポート付き
NFCポート付き
キーパッドは薄い押し心地
キーパッドは薄い押し心地
1680mAhのバッテリー
1680mAhのバッテリー
SIMとMicroSDは挟み込む
SIMとMicroSDは挟み込む
スクショ館
GPSとGLONASSが受かる。
GPSとGLONASSが受かる。
Outlookは重い。とても重い。
Outlookは重い。とても重い。
地図アプリはそれなりに使える。
地図アプリはそれなりに使える。
変なリンクを踏むと・・・
変なリンクを踏むと・・・
APKのダウンロードは阻止される
APKのダウンロードは阻止される
加速度センサーのみ搭載
加速度センサーのみ搭載
aptXで楽しい音楽ライフ
aptXで楽しい音楽ライフ
一般的な圧縮音源に対応するプレーヤー
一般的な圧縮音源に対応するプレーヤー
DIGNO ケータイ ベーシック KY-41B
2021年6月に、いきなり発売されたビジネス顧客向け4Gケータイです。
iPhoneのOSが14.6の時代に発売されたのを考えれば、新規で作られたのが奇跡なのでは?と思ってしまいます。
スマホ・タブレット時代にあえてガラケー型端末を買う意味はあるのか?この問いに対して京セラは、購入対象者の調査と徹底したコストダウン、従来なら重視されていた機能を思い切って非搭載にし、そしてドコモのビジネス用として新規に設計した使いやすさが光る逸品となっております。
色々無い
このケータイを初めて持つと、手触りに驚きます。外側はなんと塗装レスなのです。そしてサブディスプレイもありません。サイドキーもありません。NFCもないので、裏面は粗目のシボ加工とDIGNOのロゴをあしらったカバーが一枚あるだけです。
そして最大の特徴は、カメラレスだということ。このケータイは写真を撮ることができません。この点についてドコモの製品紹介ページでは、カメラ禁止の現場に持ち込んで使えることをアピールしています。
SH-02Lと比べて色々な機能がありませんが、搭載しているSoCが一世代アップデートされています。これはおそらく新規開発の恩恵ですね。SH-02Lでは無改造でももたつきが気になりましたが、KY-41BではSnapdragon 215が搭載され、特に日本語入力の応答が良くなりました。SH-02Lと比べて発熱も少なくなっていて、全体の動作も軽快になりました。メモリは相変わらず1GBのままですが、SoCの進化から、音声着信時に受話ボタンを押せないという事態にはなりにくいでしょう。
当然ワンセグもありません。

表面は細かい梨地

裏面は粗目のシボ

明るい通知ランプ
明るい通知ランプ
粒立ちの良いキーパッド
粒立ちの良いキーパッド
裏ぶたを開けました
裏ぶたを開けました
割と戸惑うカードスロット
割と戸惑うカードスロット
カードスロット拡大
カードスロット拡大
欲しかったあの機能
KY-41Bはバイブレーションがやたら大きいです。固い机の上に置いてバイブレーションさせるとドコドコ音がします。斜めに置いておくと振動で滑って落ちていきます。振動の大きさはとても気に入りました。
液晶画面裏側にはサブディスプレイがありませんが、この時代には不釣り合いな大きさの通知LEDが鎮座しています。針孔の奥から申し訳なさそうに光るタイプとは別次元の見やすさ・わかりやすさです。
VoLTE HD+に対応しています。通話の明瞭度はかなり良いです。年寄りに電話させるときに聞き返しが少なくなります。対アナログ電話の通話品質は並ですが、3G端末よりはだいぶ良いです。
充電を85%までで切り上げる「バッテリーケアモード」がついています。
普通に使っている分には、バッテリーの減りが早くなる頻度はSH-02Lと比べて少ないですが、画面をPIN等でロックして使って2週間ほど経つと、画面が真っ黒になって復帰しなくなったりします。
待ち受けには好きなガジェットを置けます
待ち受けには好きなガジェットを置けます
バッテリーケアモードで満充電回避
バッテリーケアモードで満充電回避
電池はまあまあ持ちます
電池はまあまあ持ちます
MAPS.MEも動きます
MAPS.MEも動きます
通知にさわれるが
クイック起動キーの「II」ボタンを長く押すと、通知画面を開くことができるようになっています。もう通知を開くためだけにマクロを組む必要はありません。ただし困ったことに、画面ロック中に通知を読むことはできません。
Iボタン長押しならアプリ履歴を開けます。
画面の明るさは、やはり自動調整されません。そのたびに設定画面に潜る必要があります。クイック起動キーにウィジェットは設定できませんが、野良アプリの導入と待ち受け画面にウィジェットを配置する裏技で負担軽減はできます。
4Gケータイ恒例のDIY要素
開発者向けオプションからウィジェット編集を選択することで、待ち受け画面にウィジェットを配置できます。配置したいマスを選んで追加・配置していく流れになりますが、削除はいっぺんに行う必要があります。削除は設定の「壁紙・ディスプレイ」→「壁紙」→「時計・カレンダー」で行います。また、ウィジェット対応アプリを入れるとそのウィジェットも登録できます。
UIからウィジェットのサイズを変更する操作は実装されていません。そのため、ウィジェットアプリ側でウィジェットサイズを変更できなければ、サイズは配置した時のままです。
SH-02Lでは、野良アプリの操作に必要な仮想マウスが表示されず、がっかりしたものでしたが、KY-41Bでは方向キーで動かす仮想マウスが表示されます。中央押しでワンタップ、長押しした後に方向キーでスワイプ入力を発生させます。
Bluetoothマウスには対応していません。意図的にふさいだものと思われます。マウス・キーボード操作は「scrcpy」等のPCツールで代用できます。
SH-02Lよりも処理速度が上がっているので、軽めのスマホアプリでGoogle Play 開発者サービスに依存しないものであれば、結構快適に動かせます。LPCMレコーダーのリモコンアプリは、この筐体の形もあってスマホで動かす以上に便利です。
ブラウザでGoogle Mapsを見ても、SH-02Lのようにすぐに熱くなったり、かくついたりはしません。地図アプリのMAPS.MEも、実用性はともかくそれなりの速度で動きました。
Outlookを入れて連絡先とカレンダーの同期はできると思いますが、SH-02Lを使用していた時点で私がその使い方をやめたので本当にできるかはわかりません。連絡先データの流し込みはVCFファイルの読み込みで出来ます。USB経由でも良し、Bluetoothを介してでも良しで、3Gでは考えられなかった便利さです。
MicroSDは相変わらずexFATは読めません。しかし、64GB以上のMicroSDXCを入れて初期化すると、律儀にFAT32フォーマットで初期化してくれます。
私が入れた野良アプリ
CPUは良くなりましたが、メモリ1GBの制約はなかなか厳しいので、常駐型アプリは厳選する必要があります。
ショートカット+
画面の明るさを変更するウィジェットを作成できます。また、システムUI調整ツールを開くのにも使えます。
DIGI 時計ウィジェット
私はかつてau 3Gガラケー使いでした。待ち受けで秒まで出る時計を表示させていたので、それを再現するために入れました。
AirGuard
AirTagやTile等の落とし物を探す発信機に追跡されていないか調べるアプリです。Google Play 開発者サービスに依存しないので、この機械でも動きます。持ち主から離れて時間の経ったAirTagを鳴らせないか実験したところ、見事に鳴動することができました。
展望?
この記事を作りかけのまま放置していたら、ドコモからケータイの新製品が発表されていました。arrows ケータイ ベーシック F-41Cと名乗り、富士通からの供給です。ドコモオンラインショップで確認したところ、私が今使っているKY-41Bよりも安価で購入できるようです。
ボディに塗装あり、カメラあり、サブディスプレイあり、歩数計あり、充電クレードル対応、オープンボタン付きヒンジありと、KY-41Bに比べれば扱いやすい製品になっているものと思われます。(KY-41Bは玄人向けすぎる)
ガラケー型の携帯電話は、3G時代に極めたスマートな機能・サービスを、PDAから発展した板型の電話に受け渡して、安価・軽量・堅牢・高信頼性で時代に切り込んでいくようですね。

そのほか