Garmin Foretrex 601 日本語版 ベルクロストラップ付き

ガーミンのForetrex 601 日本語版を買いました。自転車に乗っているときに自車位置と移動の軌跡がわかったら便利かなぁ?というのが購入動機です。
下心を書いてしまえば、eTrex 10と同じことがこのサイズでできたらいいよな~というのがForetrex 601に期待していたことです。しかし、主にソフトウェア面での不出来によってそれは裏切られました。
このレビューは、Foretrex 601日本語版のファームウェア 2.90を基にしています。
大変な機能満載
執筆当時は、この章の見出しは「ダイイング(オブラートに包んだ表現)な機能」と書いていました。
カタログスペックはとても良いです。しかし、それらの機能一つ一つが安定して動作してくれません。特にひどいのはトラックログ。特定の使用条件でトラックメモリを浪費してしまい、公称の10,000ポイントをはるかに下回るポイント数しか記録できません。有効なデータを一切記録せずにトラックメモリを使い切ることもあります。
衛星の位置が確定していない状態でトラックログをオンにすると浪費が始まることがあります。浪費が始まると、1秒間隔位で無意味なデータを記録し続けます。
上の写真のような受信状態でログを記録し始めると、浪費が始まってしまうので…
衛星の位置が出てからログを取り始めます。

トラックメモリ消費量が99%を表示して泣いたオーナーもいるだろう。

ウォッチモードでもトラックログの記録が続きます。しかし測位はしていないので無駄なデータを記録してしまいます。
トラックログの記録方法は自動、時間、距離の三種類から変更できます。自動を選んだ場合、サブオプションの頻度を設定できますが、どれを選んでも粗いログデータしか採れません。なぜじゃ!
高度のデータは、マイナス値になっているととんでもなく間違ったデータを記録します。
次によろしくないのはマルチGNSSの受信。機能的にはGPS(とみちびき補完)のみ、GPS+GLONASS、GPS+GALILEOを選べるのですが、GPSのみ以外の受信が上手くいったら運が良い日です。たいてい初期測位が安定しません。衛星信号の受信を確かめる画面を出しっぱなしにしておくと、位置が確定して少しすると衛星がすべて見えなくなって、また測位をやり直す…という不安定な挙動を15分位見せてくれます。受信衛星の切り替えや電池の交換・強制的な電源オフ等でこの状態になりやすいです。
USB接続でデータを見るのも一苦労あります。PCに接続すると、なぜかForetrex 601がフリーズすることがあります。復帰は電源の強制オフ…でも良いのですが、USBケーブルの抜き差しでもいけます。
さあデータは読み出せた。次は取り出しだと意気込んでいると地雷を踏みます。Windows 10のPCに接続して、エクスプローラーの「取り出し」ボタンを押すと、またForetrex 601がフリーズします。ケーブルをさし直せば復帰しますが、PCから取り外すときはタスクバーの「ハードウェアを安全に取り外してメディアを取り出す」アイコンを使うとフリーズしません。なぜじゃ!
衛星の受信を確認する画面 GPS+GALILEOでは番号がかぶります
衛星の受信を確認する画面 GPS+GALILEOでは番号がかぶります
トリップコンピュータ 4分割 温度センサーとつながります
トリップコンピュータ 4分割 温度センサーとつながります
トリップコンピュータ 2分割 座標を2種類同時に出せます
トリップコンピュータ 2分割 座標を2種類同時に出せます
トリップコンピュータ 全画面 速度計や時計にできます
トリップコンピュータ 全画面 速度計や時計にできます
GLONASSも受かった!ラッキー
GLONASSも受かった!ラッキー
でもたまにしか受からないってどうなの?
でもたまにしか受からないってどうなの?
いいところ
バグ満載のForetrex 601日本語版ですが、捨てがたいいいところもあります。
現在地をウェイポイントとして登録するのが、非常にスピーディ&簡単
ウェイポイントを記録したい場所に移動して、MARKボタンを長押しし、「OK?」ボタンを決定すればウェイポイントの作成完了。腕に巻いてあればさらにすばやく登録できます。
バッテリー持続時間
バッテリーは単4電池を2本使います。普段使いはニッケル水素電池が良いでしょう。単4充電池は決して高容量ではありませんが、GPS+みちびき補完のみの受信モードで半日は確実に使えます。GPS受信機としてはかなり持ちます。
ABCセンサーが付いて、ANT+にも対応
高度・気圧・方位センサーが付いています。立ち止まっていても方位が分かりますし、衛星を測位していなくても高度が分かります。これは同じモノクロ液晶のeTrex 10にはない機能です。こうしたセンサーを持ちながら、バッテリー持続時間が大きく減っていないのもGood。
腕に巻ける
ハンディGPSでありながら、不格好な腕時計のように巻いて使えます。みてくれはともかく装着感は良好で、ウレタンバンドの腕時計よりもしっかりフィットします。この状態でウェイポイント登録機として使うのが、現状最も適性のある使い方だと思います。
スマホ通知
スマートフォンにGarmin connect Mobileアプリをインストールして、必要な設定を行えば、スマホの通知がForetrex 601に届きます。画面が大きいので、短いチャット等は全文読めますし、よくあるスマートウォッチのように文字が小さくて読みにくいということもありません。日本語の表示もできます。
ログはオート以外をお勧めします
ログはオート以外をお勧めします
バックライトはLOWとHIGHを選べます
バックライトはLOWとHIGHを選べます
タイマーは減算・加算の二種類 加算は99分59秒までです
タイマーは減算・加算の二種類 加算は99分59秒までです
ウェイポイントの文字数は少なめです
ウェイポイントの文字数は少なめです
Hanedaです
Hanedaです
USBでPCにつなぐとCURRENT TRACKが書き出されます
USBでPCにつなぐとCURRENT TRACKが書き出されます
ストラップの裏にふたがあります
ストラップの裏にふたがあります
記録データの取り扱いについて
トラックログの記録間隔の自動モードは、バグのせいなのか仕様なのか、eTrex 10を基準にするとかなり荒いです。記録頻度を最高(HIGHEST)にしても、eTrex 10の自動-標準モード(Auto-Normal)に遠く及びません。距離間隔または時間間隔でログを取るようにすると良いです。
トラックログは、本体をPCに接続して手動でファイルを管理するには面倒な仕様があります。もっと楽に運用するなら素直にBaseCampに取り込んでGPXを書き出すか、Garmin Connectに自動アップロードする機能を使うのがよいと思います。以下はトラックログファイルの説明です。
トラックログを書き出すと、本体のフラッシュメモリにFITファイルとGPXファイルの2つができます。FITファイルはForetrex 601が記録したトラックログのデータが間引かれずに入っています。ガーミンの通信サービスであるGarmin Connectには、このデータがアップロードされているようです。
GPXファイルには、ログポイントを500ポイントまで減らした低解像度のデータが入っています。ANT+のデータは入っていません。ガーミン曰く、表示用の低解像度データという位置づけのようです。
トラックログを書き出さずに、PCにマスストレージモードで接続すると、「CURRENT.GPX」というファイルが作られます。これは、本体のログメモリーに入っているデータを間引かずに書き出したファイルです。ANT+のデータも入っています。
書き出したFITファイルをGPSBabelなどでGPXファイルに変換すれば、高解像度のログデータを使うことができます。ただし、ANT+のログデータは破棄されます。
ウェイポイントは、どれだけ登録しても一つのGPXファイルにまとめてくれます。便利かどうかはその人の運用によるでしょう。
ANT+のデータ転送に対応しているので、同じくANT+に対応しているガーミンのeTrex 30x等のユニットとウェイポイントやルートデータのやり取りができます。ブルペで役立つ?
Ultratrac、NVGモード、ウォッチモード、デモモード
Foretrex 601の売りの一つ、Ultratracモードは、癖が強すぎて常用できる代物ではありません。これを常用するときは、本体の操作音を全部オフにしておいたほうが良いです。一定間隔で「衛星ロスト」と通知音を鳴らしてくるのですが、それを止めるためです。それから、なぜかトラックログのメモリー消費量が増えるようです。バッテリーの持ちは数段良くなっている気がします。
NVGモードは、暗視装置越しに画面を見るときに便利な機能らしいです。我ら民間人的には、明かりを消した床の間で、ウォッチモードにした画面を見るのに便利だな~くらいの効能があります。
ウォッチモードは、Foretrex 601の機能をほぼ時計のみに制限して、電池の消費を極限まで減らす機能です。消費電力を削る設計のためか、表示する時間は常に30秒~1分程度遅れがあります。衛星の受信も止まるので、トラックログの記録を一時的に停止したりするのに使えますが、トラックログの記録方法を時間ごとにしている場合、ログメモリーが進みます。
デモモードは、eTrex 10にもあった機能で、電源オンの状態で衛星を受信しなくなります。このときトラックログの記録は止まります。デモモードは電源を切る、ウォッチモードにする、マスストレージモードでPCに接続すると解除されます。
デモモード中にトラックログの記録設定を開くと、トラックログの記録機能が完全にオフになります。デモモード中でも、この画面を開かなければ、デモモードを解除した時にトラックログの記録設定は以前の状態を引き継ぎます。オフならオフを引き継ぎますし、オンならオンを引き継ぎます。たぶんね。挙動不審すぎて正確に書けたか自信がありません。誰か検証してくれ~。
EPOについて
Foretrex 601は、測位性能を上げるために外部通信で衛星軌道データを取り込むことができます。AGPSの一種で、EPOと言うみたいです。パソコンではGarmin Express経由、スマートフォンではGarmin connect mobile経由で取り込めます。PCから本体のファイル一覧を見たときに、GARMIN→REMOTESWとたどり、その中にEPO.BINファイルがあればデータを取り込めています。
EPOがあると、衛星のアルマナックを保持している時に測位が早くなります。GPSの受信画面を見ていると、衛星のグラフバーがすぐに黒色に変わるのを確認できると思います。
EPOは腐りやすく、取得したその時が最も効率良く測位できます。7日程度で期限が切れるので適宜入れなおしながら使うことになります。EPOの期限が切れた時の測位速度は、eTrex 10や30xよりも遅いです。
GLONASSやGALILEO、みちびきに対してはEPOのご利益を受けられません。それに、理不尽なコールドスタートによるアルマナックを失った状態での測位は短くならないのでありました。
どういうときに使うと便利か?
基本的に、常用には向きません。電源を入れてから気を付ける点が多く、準備に時間がかかるためです。電源を入れたら後は放置でトラックログを取りたいならeTrex 10のほうが便利です。設定は混乱しないですし、きれいなログが取れますし、価格も安いです。地図とABCセンサーがほしければ大体同じ値段の英語版eTrex 30xでも良いわけです。あ、でも今は高いeTrex 32xしかないか。それなら手段を変えて、今あなたが手に持っている板状のコンピューター(スマホのこと)にアプリを入れて、同じ動作をさせても良い。値段はもっとも安上がりになるはずです。
でも、フィールドに飛び出してから悠長にスマホ画面を見ていられるのか?画面を見るなら安定した場所に立つか座るかして、比較的安全な場所で、落ち着いた状態でいるのではないでしょうか。もしそうではないとしても、自転車や車であれば、ハンドルバーやダッシュボードに取り付けて使うでしょう。
しかし、それができないときはどうでしょう。レンタカーやレンタサイクルなどでマウントを取り付けられないときや、両手を自由にしておく必要のある山行の時に、腕に巻けるForetrex 601にスポットが当たってくるのではないでしょうか。どうせ地図なんかこのサイズの画面では見えないし…
便利な使い方の一例
特殊な事例ばかりですが、それがこの機械の適正ってことで…
バイク・自転車ツーリングの腕時計の代わりに
文字サイズが大きいので4分割画面でも分かりやすいです。
自分の腕に巻いてレンタカー・レンタサイクルのGPS要員に
普段使いのGPS機器がマウント付でないと使えず、寂しさを感じる人向け。
登山に
スマートウォッチに比べて操作しやすく画面も見やすい。地図の代わりにウェイポイントやルートデータを準備する必要あり。
GPS付きドローン(DJI Phantom等)のセンサー異常を診るときに
磁気エラーと衛星補足数の確認に使えます。Foretrex 601の表示でもエラーがあったらドローンも影響を受けます。
パラシュート降下するときに
そういうことをするときに便利な機能がメニュー画面にあります。でも私には使い方が分かりません。

そのほか